マンションの外壁や設備などは徐々に劣化していくため、適切な時期に修繕が必要です。
修繕には、多額の費用と長い工事期間がかかることも珍しくありません。そのため、修繕の内容や費用を定めた長期修繕計画を作成しておきましょう。
本記事では、マンションの長期修繕計画の概要と、計画作成時の注意点を解説します。これから計画を策定する方や、計画の修正を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
■マンションの長期修繕計画とは?
マンションの長期修繕計画とは、どのようなものを指すのでしょうか。ここでは、その目的と内容を解説します。
◇マンションの長期修繕計画の目的
どのようなマンションでも、時間の経過による劣化は避けられません。劣化は性質上、以下の3つに分類されます。
- 物理的な劣化:建物自体の経年劣化
(例)外壁のひび・錆・タイル剥がれ、防水機能の低下など - 機能的な劣化:技術の進歩により、設備機器が古いモデルになっていくことで生じる利便性や資産価値の低下
(例)防犯カメラやインターホンなどの機能 - 社会的な劣化:建物自体が時代の変化に対応できていないことで生じる利便性や資産価値の低下
(例)外観やデザインの陳腐化、間取りのズレなど
劣化に対応するには、適切な時期に修繕を行なわなければなりません。
長期修繕計画は、快適な住環境とマンションの資産価値を維持するため、劣化に対してどのように対応するかを記した計画書です。長期修繕計画によって、いつどのような修繕を行なうか、修繕にかかる費用はどれくらいか、修繕に向けてすべきことは何か、などが明確になります。
なお、計画期間は、新築マンションの場合は30年以上、既存マンションの場合は25年以上が目安です。
◇マンションの長期修繕計画に入れるべき内容
長期修繕計画には、計画期間、推定修繕工事項目、修繕周期、推定修繕工事費、収支計画などを基本に、マンションの形態や仕様に応じて必要な項目を盛り込みましょう。
修繕計画に含めるべき項目の参考として、国土交通省が公表している長期修繕計画の構成例を紹介します。
- マンションの建物・設備の概要等
(1)敷地、建物の概要
(2)設備、附属施設の概要
(3)関係者
(4)管理・所有区分
(5)維持管理の状況
(6)会計状況
(7)設計図書等の保管状況 - 調査・診断の概要
(1)劣化の現象と原因
(2)修繕(改修)方法の概要 - 長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方
(1)長期修繕計画の目的
(2)計画の前提等
(3)計画期間の設定
(4)推定修繕工事項目の設定
(5)修繕周期の設定
(6)推定修繕工事費の算定
(7)収支計画の検討
(8)計画の見直し
(9)修繕積立金の額の設定 - 長期修繕計画
(1)長期修繕計画総括表
(2)収支計画グラフ
(3)長期修繕計画表(推定修繕工事項目別、年度別)
(4)推定修繕工事費内訳書 - 修繕積立金の額の設定
出典:国土交通省「長期修繕計画標準様式」
■マンションの長期修繕計画と修繕積立金の関係
マンションの修繕には多くの費用がかかります。高額な修繕費を一度に集めるのは難しく、修繕積立金として毎月積み立てて用意するのが一般的です。修繕積立金は長期修繕計画にも記載するため、概要と金額の設定方法を把握しておきましょう。
◇修繕積立金とは?
修繕にかかる費用を区分所有者で分担して毎月積み立てたものを、修繕積立金といいます。積立額はマンションの状態や予定されている修繕内容によって大きく変化し、状況に合わせて適宜見直さなければなりません。
なお、修繕積立金と似た言葉に「管理費」がありますが、修繕積立金と管理費はその利用目的が異なります。管理費は共用部の掃除や点検、植栽の管理、管理員の人件費など、共用部の日常的な管理のための費用です。
◇修繕積立金の算出方法
修繕積立金の額は区分所有者の生活に大きく関わるため、適切な計算方法で算出しなければなりません。
基本的に、推定修繕工事費の累計額を計画期間で割り、住戸の負担割合によって修繕積立金の額を決定します。新築マンションと既存マンションでは、修繕費の算出に使用する参考資料が異なるため、まずは必要な資料を集めましょう。
新築の場合は、設計図書や数量計算表などをもとに、既存マンションの場合は、現在の修繕計画や設計図書、修繕履歴、劣化状況の診断結果などをもとに修繕費用が算出されます。
また、修繕積立金の積み立て方法は、均等積み立てと段階増額積み立ての2種類が一般的です。
積み立て方法 | 特徴 | |
均等積み立て | 必要な修繕費を修繕期間で均等に割って負担する | 毎月の修繕費が一定で、資金計画を立てやすいのがメリット |
段階増額積み立て | 初期の積立額を抑え、段階的に積立金を増やす | 初期費用は抑えられるが、徐々に費用負担が増えていくため、区分所有者間の合意を得にくい場合がある |
どちらの方法にもメリットはありますが、修繕費を安定的に積み立てられることから、均等積み立てが推奨されています。
また、適切な根拠をもとに修繕積立金を用意していても、自然災害や不測の事態により不足する場合も考えられるでしょう。その場合は、一時金を徴収して対応しますが、追加徴収は区分所有者の反発をまねく可能性があります。
不測の事態を考え、できるだけ余裕をもって資金を確保することが大切です。
■マンションの長期修繕計画作成の注意点積立金の関係
長期修繕計画を立てる際には、以下の3点に注意しましょう。
◇計画の周知を徹底する
長期修繕計画は、区分所有者全員に関わる重要なものであるため、周知を徹底し理解と承認を得る必要があります。長期修繕計画の策定や変更にあたっては、総会前に必ず説明会を開催し、区分所有者の疑問や不満にしっかりと答えましょう。
総会での決議を経れば、修繕計画を実行に移せるようになります。決議後は長期修繕計画と管理規約などをいつでも閲覧できるよう保管し、透明性を確保しましょう。
◇計画は定期的に見直しを行なう
修繕をとりまく環境は常に変化しています。台風や大雪などの被害を受けて急に修繕が必要になったり、物価高騰・増税などにより修繕費が想定以上に高くなったりすることもあるでしょう。
修繕環境の変化に対応するため、修繕計画は5年程度ごとに見直すのがおすすめです。見直しの対象は、修繕の時期やかかる費用など多岐にわたります。計画全体を見直すとなると、見直しだけでも1~2年かかるため、時期を定めて計画的に進めることが大切です。
また、見直した計画の内容は、忘れずに区分所有者に周知して合意を得ましょう。
◇修繕積立金は慎重に検討する
修繕積立金は、区分所有者の生活に大きく関わります。そのため、正しい根拠をもとに算出し、一定の基準をもって適正な割合で区分所有者が負担するよう、配慮しなければなりません。
修繕積立金の算出方法を明確にし、区分所有者の理解を得られるようにしましょう。特に計画途中からマンションの区分所有者となる方には、計画の内容や修繕積立金の額について詳しく説明しておく必要があります。
また、修繕積立金の積み立ては、毎年の負担額がわかりやすい均等積み立て方式を基本とするのがおすすめです。トラブルの発生を防ぐためにも、透明性を重視して徴収しましょう。
■まとめ
マンションの住環境や資産価値を維持するためには、計画的な修繕が欠かせません。修繕には時間と費用がかかるため、長期修繕計画を策定し、適切に修繕できるよう準備しておきましょう。
長期修繕計画を策定する際には、必要な修繕を確実に計画に盛り込んだうえで、計画内容を区分所有者全員に周知徹底することが大切です。
また、修繕には多額の費用が発生します。区分所有者全員が納得できるよう、修繕積立金の設定方法を明確にし、透明性を持って資金を集めてください。
修繕積立金が不足する場合は、一時金の徴収や工事内容の見直しを検討しましょう。
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