杉並区は新宿や渋谷にも容易にアクセスが可能であり、住みやすい住宅街が広がっている人気のエリアであります。また、行政サービスも行き届いており、2020年4月で待機児童数ゼロを達成しており子育てしやすい環境であるともいえます。弊社事務所は中野区にありますがその中野区の隣の区が杉並区になります。
本工事はその杉並区にある小規模のビルで漏水が発生しピンポイントで直してほしいという依頼がありお見積り、施工をさせていただくこととなりました。
◎工事概要
物件名:エイコービル
住所:東京都杉並区方南
建物種別:地上4階建商業ビル
造り:鉄骨造り(ALC)
工期:2017年11月14日~2017年11月21日
工事内容:漏水補修工事(以下詳細)
- 共通仮設工事
- 直接仮設工事
- シーリング工事
- 防水工事(ウレタン防水密着工法)
■漏水箇所
漏水しているのは4階のサッシ廻りからと1階の基礎廻りからでした。4階は斜壁(設計の都合上壁が斜めになっている)部分のサッシからの漏水でした。この「斜壁」はその構造上から垂直面より紫外線の影響を受けやすいせいか劣化しやすいようで、弊社の経験上でも斜壁絡みの漏水は多々あります。このサッシ廻りを屋上より懸垂下降しサッシにアクセス、既存のシーリングを打ち替えることとなりました。
4階サッシ廻りの他に1階の基礎付近から水が染み出てくるようでこちらもシーリング工事にて止水することになり、念のため画像の赤囲み部分(高さ1800㎜×幅3000㎜)の範囲まで広げてのシーリングの施工としました。鉄骨ALC造の建物はALCパネルと基礎のつなぎ目からの漏水が時々見られます。この画像のように非常に狭い場合も多くかなり施工し辛いことも多々あります。
■漏水補修工事
漏水を止める為の手段はいろいろありますが、外壁に対しては一般的にシーリング材が多く用いられます。漏水の原因を突き止めるのは難しく、お金をかけて散水調査などを行っても原因を突き止めることが出来るかどうかは五分五分である為、漏水の原因の調査を行わずに漏水個所と外壁の状況で漏水の原因を推定して漏水の補修工事を行うことがほとんどだと思われます。
これは漏水の調査費用の方がピンポイントで漏水補修工事を行う方が割安であるからです。
□シーリング工事
漏水補修・修繕工事におけるサッシ廻りのシーリング工事については劣化している既存のシーリング材を撤去して新規に打ち替える場合がほとんどです。こちらの杉並区の現場でも同様にシーリングの打ち替え工事を行いましたが、既存のサッシ廻りにシーリングが入っていない場合には新規にシーリングを打ち込んだりもします。
劣化している既存のシーリング材を撤去工事です。シーリングとサッシの取り合い部分及びシーリングと躯体の取り合い部分にカッターで切り込みを入れラジオペンチで引っ張ったりしながら既存シーリングを撤去していきます。ALC塗装面のシーリングの撤去は比較的楽な部類ではありますが、効率よく撤去工事を進めていくにはコツが必要です。
撤去した部分にシーリング施工専用の養生テープで養生します。これは新しくシーリング材を打ち込みヘラで均した際にはみ出した材料が他の部分に付着して汚してしまわないようにするためです。
シーリング施工部をテープ養生後シーリング材の接着力を高めるためのプライマーを塗布します。メーカーやシーリング材の種類によってプライマーの種類も異なりますが、施工上重要なこととしては万遍なく塗布することです。
先ほど撤去した部分に専用の「ガン」を使用してシーリング材を打ち込んでいきます。シーリング材を打ち込んだ後、シーリング材をヘラで均していきます。このヘラは市販されているものもありますが、実際に作業する職人さん達は撤去した溝の状況に応じたものを自分たちで自作して使用する場合がほとんどです。いったん製作したヘラは、似た状況であれば他の現場でも使用できますので洗浄しながら使いまわすのが普通です。
シーリング材をヘラで均した後、シーリングの養生テープを剥がしてシーリング工事の完了となります。ここで注意しなければならないのは、シーリングの養生テープが乾燥する前のシーリング材に触ってしまい仕上がりが悪くなってしまう事です。最後の最後まで注意しながら施工にあたることが肝になります。
1階指定範囲の基礎廻りのシーリングは非常に狭い箇所で、かなり施工し辛い状況でした。施工前の写真を見る限りですと無理やり補修した跡が伺えます。弊社で施工しましたがそのやり辛さのせいできれいな仕上がりとはいきませんでしたが漏水の方は止まったという事でした。
□屋上防水工事
こちらの杉並区の現場ではシーリング工事以外にも屋上の防水工事のご用命を承りました。最上階の4階のサッシ廻りからの漏水という事で、最上部に当たる屋上の防水も一緒に施工することになりました。防水の工法は様々ありますが現況の屋上の状況からウレタン防水(密着工法)が最適と判断させていただき施工にあたりました。
施行前の屋上の状況です。屋上にはテナントの室外機があり、その他架台等、施工の妨げになるものが多くあます。そういった場合にウレタン防水は最も効力を発揮する工法なのかもしれません。一般的に上げられるウレタン防水のメリットとしては、
- 複雑な形や架台等の細かい役物がある場合でも施工がしやすい
- 液体状の防水材である為継ぎ目のない美しい防水層を作ることが可能
- 継ぎ目がない防水層になる為、防水層の継ぎ目が剥がれることによる漏水が起こりえない
- 既存の防水層の上から塗り重ねが可能で廃材が出にくい
- 防水層が軽量な為、建物自体の負担が軽くて済む
- 比較的工期が短く、コストを抑えることが可能
が挙げられます。もちろんデメリットもありますがデメリットを上回るメリットがかなり多い為、修繕工事における防水の工法として最も受け入れられている工法であると言えます。
防水工事前の下処理(下地補修・高圧洗浄等)を行ったのちプライマーを塗布します。このプライマーは床面とウレタン防水材を密着させるための接着剤のような役割を果たします。
プライマー乾燥後はウレタン防水材を塗布していきます。ウレタン防水材を塗布するのにローラーを使う人や鏝を使用する人さまざまです。
防水を施工するのにローラーが使用出来るという事はローラーをメインで使用する業種である塗装業者の参入も見込めます。実際に塗装業を営みながらもウレタン防水施工も兼務する職人さんも多々いらっしゃいます。
そのあたりの施工性もウレタン防水の普及に一役買ったのではないかと思われます。
ウレタン防水材は一般的に2層塗布することになっていますので今回の杉並区の現場でもウレタン防水を2層塗布する形で施工しております。一般的なウレタン防水材は乾燥に時間がかかる為、1日に2層塗布することが難しい場合もありますので、通常の工程を踏まえて施工した場合はこのウレタン防水材塗布の工程だけで2日かかる事になります。
ウレタン防水の最後工程としてトップコートの塗布を行います。このトップコートはウレタン防水層を紫外線から守る保護的な役目を果たしています。通常はアクリルウレタン系のトップコートを使用しますが、長期の耐用年数を求められる場合にはフッ素系のトップコートを使用することになります。
アクリルウレタン系のトップコートを使用した場合、メーカとしては5年に一度トップコートの塗り替えを行ってほしいという事になっています。これがフッ素系のトップコートを使用した場合、アクリルウレタン系トップコートを使用する場合よりも数百円ほど材料単価が上がる形になりますが、メーカー曰く10年間ノーメンテナンスで問題ないという事ですので10年後のトータルコストとしてはフッ素系のトップコートを使用した場合の方が安く上がる形になります。
ただ実際に、5年ごとにアクリルウレタン系のトップコートを塗り替える人がどの程度いるのか不明ですし、アクリルウレタン系のトップコートで施工されているウレタン防水層がノーメンテナンスの為劣化して漏水が発生したという話はあまり聞いたことがありませんので、メーカーが材料保証のマージンを取って早めのメンテナンスとして謳っているだけなのかもしれません。
今回のウレタン防水工事では単純にウレタン防水の施工だけではなくアルミ笠木を外した部分もウレタン防水を行い排水溝(ドレン)部分も「改修用ドレン」と呼ばれる専用ドレンを取り付けさせていただきました。
今回の屋上防水工事では、屋上の廻り縁立上のアルミ笠木を外した部分もウレタン防水施工しましたが、更に万全を期してアルミ笠木同士のつなぎ目も「ブリッジシーリング」という工法でシーリング施工いたしました。
一般的なシーリング施工では、躯体側の溝に沿って、要は躯体側の凹部分にシーリングを充填する形になりますが、ブリッジシーリングでは躯体側より10㎜程度盛り上げる形で施工する工法の事を言います。(上画像でも10㎜程度盛り上がってシーリング施工されていることが確認できると思います)
シーリングの耐用年数は、シーリングの深さと幅によっても大きく左右されます。ブリッジシーリングを行わなければならな部分については、一般的に幅や深さが取れない部分について行うことが多い工法です。今回のアルミ笠木のつなぎ目のシーリングについても、つなぎ目の幅や深さが適正な数値が確保できない為ブリッジシーリングを選択させていただきました。
アルミ笠木のジョイントについてはシーリングの幅や深さが適正量確保できない為、一般的によく採用される工法でもあります。
■まとめ
こちらの杉並区のビルは鉄骨ALC造という事で、ALCパネル間やサッシ廻りのシーリングの切れ部分からの漏水が比較的発生しやすい状況です。鉄骨ALC造は漏水箇所の近くの外壁が原因での雨漏りが比較的多い為、漏水箇所付近を中心に雨漏り対策を行えば、比較的少ない予算で雨漏り補修が完了することが多いです。
我々オフィスチャンプではこういった小規模補修工事からビルやマンションの大規模修繕工事までその工事規模にはこだわらない形での施工を行っております。今回の杉並区のビルでの雨漏り補修工事のようなピンポイントな補修工事も得意とするところです。
ピンポイント補修での足場作業では施工費用の大部分を足場代が占めてしまう事も多々ありますが我々の得意とする無足場工法(ロープブランコ工法)では、補修したい場所にピンポイントでロープアクセス出来るため足場を必要とせず純粋に施工に必要な費用のみで施工出来るためより費用を抑えた漏水補修工事が可能となります。
漏水補修以外のピンポイントな外壁工事にも対応しておりますので費用を抑えて外壁補修工事を行いたい方がいらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。