大規模修繕の塗装工事の内容とは? 塗装の必要性や費用、工事の流れ、注意点を解説

マンションは実物資産のため、時間経過による経年劣化が避けられません。建物の機能を維持するためには、一定の周期で大規模修繕を行なう必要があります。

大規模修繕に含まれる工事の一つに「塗装工事」がありますが、「何をどう修繕するのかわからない」「そもそも本当に必要なのか?」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

本記事では、塗装工事の必要性を踏まえつつ、大規模修繕における塗装工事の種類や費用、工事の流れなどについて解説します。マンションの塗装工事を検討されている方は、ぜひご一読ください。

■塗装工事の役割

塗装工事とは、建物の外壁や鉄部を塗り替える工事のことを指します。

なぜ塗装工事が必要なのかというと、建物の劣化を防ぐためです。特に剥き出しになっている外壁は雨風や紫外線によって劣化しやすく、そのまま放置すると躯体に影響し、マンション自体の耐久性が落ちる可能性があります。また、建物の鉄部も錆が発生するため、塗装による保護が欠かせません。

新築時はこれらの箇所に塗装が施されていますが、塗膜(塗料の膜)は時間とともに劣化するため、定期的に塗り替える必要があります。また、外観をきれいに保つことも塗装の目的の一つです。

マンションの居住環境や資産価値を維持するためにも、塗装工事は必要不可欠といえるでしょう。

■大規模修繕における塗装工事は2種類

マンションの大規模修繕における塗装工事は、大きく分けて「外壁塗装工事」と「鉄部塗装工事」の2種類です。

施工箇所はもちろん、工程や修繕周期もそれぞれ異なるため、塗装工事を依頼する前に把握しておきましょう。

◇外壁塗装工事
外壁塗装工事は、マンションの外壁・天井(共用部やバルコニーの天井)の塗り替えのほか、タイル部分の補修やシーリング工事なども含みます。

マンションでは高所作業が基本であるため、足場を組み立てなければなりません。建物が大きいほど時間も費用もかかるため、大規模修繕に合わせて実施するケースがほとんどです。

ただし、外壁に以下のような劣化が見られた場合、大規模修繕以外でも塗装工事を適宜行なう必要があります。

  • 塗膜の剥離
  • 塗膜のひび割れ(クラック)
  • チョーキング(外壁に触れると粉が付着する状態)
  • 露筋(鉄筋が外壁から押し出され露出している状態)
  • 変色、色褪せ
  • シーリングの異常(ひび割れ・欠落など)

塗料の耐用年数は5~25年とかなり差があるため、使用した塗料をもとに修繕周期を検討しましょう。

◇鉄部塗装工事
マンションにおける鉄部とは、以下のような箇所を指します。

  • 鉄骨階段
  • 玄関扉
  • エレベーターの扉や枠
  • 非常階段の扉
  • 手すり
  • 給水管
  • メーターボックス
  • 消火栓ボックス
  • 駐車場

これらの箇所で塗装の剥離や色褪せ、チョーキングなどの劣化が見られた場合、鉄部塗装工事による補修が必要です。そのまま放置すると錆が広がり、鉄部に穴が開いてしまうことがあります。

鉄部の修繕周期は3~6年で、鉄部塗装工事は大規模修繕より短い周期で実施するケースが一般的です。劣化状況によっては、さらに周期を短縮しなければなりません。

大規模修繕以外でも定期的に点検し、必要に応じて足場がなくても施工できる箇所の塗装を実施しましょう。

■大規模修繕における塗装工事の費用

国土交通省が公表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」をもとに、大規模修繕全体にかかる費用の割合をまとめました。

  • 外壁塗装:24.5%
  • 床防水:18.6%
  • 屋根防水:13.4%
  • 外壁タイル:12.9%
  • シーリング工事:12.0%
  • 鉄部等塗装:7.4%
  • 建具・金物等:7.4%
  • 共用内部:3.7%

参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

「外壁塗装」「鉄部等塗装」の数値からわかるように、塗装工事だけで費用全体の約3割を占めます。

実際の費用はマンションの規模や塗料の種類によって変動しますが、3階建てであれば300万円前後、5階建てであれば500万円前後が相場です。

先述したように、マンションでは足場の組み立ても必要であるため、足場設置費用もかかります。しかし、大規模修繕と時期を合わせて塗装工事を実施すれば、足場代を節約できるでしょう。

■塗装材の種類

マンションの塗装工事で使用される塗装材は、大きく分けると以下の5種類です。

  • アクリル塗料
  • ウレタン塗料
  • シリコン塗料
  • フッ素塗料
  • 無機塗料

種類ごとに特徴やメリット・デメリットが異なるので、それぞれ詳しく解説します。

◇アクリル塗料
アクリル塗料は、1平方メートルあたり1,000~1,500円と安く、発色に優れている塗装材です。カラーバリエーションが豊富という特徴もあります。

ただし、耐用年数が5~8年と他の塗装材より短く、実質的なコストパフォーマンスはあまり良くありません。紫外線に弱く変色しやすいうえ、塗膜のひび割れが起こりやすいため、頻繁に塗り替える必要があります。

また、浸透性が高く建物内部に湿気が入りやすくなるため、水気が多い場所では使えないこともデメリットです。

◇ウレタン塗料
ウレタン塗料は、1平方メートルあたり1,800~2,500円と比較的安価で、柔軟性やメンテナンス性に優れている塗装材です。ひび割れや変形が起こりにくいうえ、木部・鉄部ともに使用できるので、塗る場所を選びません。

一方、耐用年数は7~10年とアクリル塗料より長いとはいえ、その他の塗装剤と比べると短めのため、コストパフォーマンスは良いとはいえないでしょう。紫外線に弱く、黄色く変色しやすいというデメリットもあります。

◇シリコン塗料
シリコン塗料は、1平方メートルあたり2,500~3,500円程度で、耐用年数が10~15年と比較的長い、人気の塗装材です。耐熱性・耐水性・耐候性が高い、汚れにくく美しさを保ちやすいなど、性能も優れています。製品のバリエーションが多く、選択肢が幅広いこともメリットの一つです。

バランスの良い塗装材ですが、性能と価格は比例します。価格の安さばかり重視すると、思ったような仕上がりにならない可能性もあるので、注意しましょう。

◇フッ素塗料
フッ素塗料は、1平方メートルあたり3,500~5,000円とやや高価ですが、耐用年数が13~20年と長く塗膜が劣化しにくいため、マンションによく使用される塗装材です。頻繁に塗り替える必要がなく、トータルコストを抑えやすいメリットがあります。

また、高級感のある落ち着いた仕上がりになるため、外観の美しさを重視したい場合にもおすすめです。

ただし、近年は同価格帯でより耐用年数が長い塗装材が開発されているため、それらの塗装剤としっかり比較検討しましょう。

◇無機塗料
無機塗料は、1平方メートルあたり4,000~5,500円と高価ですが、耐用年数が15~25年とトップクラスに長く、高い耐久性を持つ塗装材です。雨風や紫外線に強く、カビ、こけ、ほこりなども付着しにくいため、劣化が遅いというメリットがあります。

公共施設や海沿いの工場などでの豊富な導入実績があることからも、その性能の高さが伺えるでしょう。

ただし、耐用年数が非常に長いため、他の箇所のメンテナンスサイクルとずれやすい点はデメリットといえます。

■塗装工事の流れ

マンションの塗装工事を検討するにあたり、あらかじめ工事の流れを把握しておきたいという方も多いのではないでしょうか。

そこで、外壁塗装工事および鉄部塗装工事における、基本的な流れを紹介します。

◇外壁塗装工事の流れ
マンションの外壁塗装工事は、以下のような流れで実施します。

  1. 足場・シートの設置
    高所作業を安全かつ効率的に実施できるよう、足場を設置する。さらに、塗料の飛散を防ぐため、メッシュシートを張り巡らせる。
  2. 高圧洗浄
    高圧力の水を噴射し、外壁に付着した汚れやほこり、剥がれかけた塗膜などをきれいに取り除く。
  3. 下地処理
    外壁の凹凸を削ったり、ひび割れや破損を埋めたりして、表面(塗装の下地)を補修する。
  4. 養生
    塗料や汚れが付着しないよう、施工箇所の周囲をマスキングテープやビニールシートなどを使って覆う。
  5. 下塗り
    塗料の密着性を高めるために、接着剤の機能を果たすプライマーやシーラーを塗布する。
  6. 中塗り
    下塗りが乾燥したら、選んだ塗料を塗布する。
  7. 上塗り
    中塗りが乾燥したら、さらに塗料を塗布する。

◇鉄部塗装工事の流れ
マンションの鉄部塗装工事は、以下のような流れで実施します。

  1. 錆落とし(ケレン)
    塗装の下地を整えるために、サンドペーパーや専用の工具を使って、できる限り鉄部の錆を削り落とす。使用する工具は、鉄部の状況に合わせて選定する。
  2. 養生
    塗料や汚れが付着しないよう、施工箇所の周囲をマスキングテープやビニールシートなどで覆う。
  3. 錆止め塗装(下塗り)
    施工箇所が錆びることを防ぐため、プライマー(錆止め塗料)を塗布する。
  4. 中塗り
    下塗りが乾燥したら、選んだ塗料を塗布する。
  5. 上塗り
    中塗りが乾燥したら、さらに塗料を塗布する。

なお、錆止め塗装・中塗り・上塗りに関しては、塗り残しを防ぐため、すべて色を変えて塗装します。

■大規模修繕における塗装工事の注意点

マンションの塗装工事を実施する場合には、以下の2点に注意する必要があります。

◇塗装材選びは慎重に
先述したように塗料は種類が多く、価格や性能がそれぞれ異なります。できるだけコストを抑えたいとしても、価格だけに着目して塗料を選ぶべきではありません。

安価なアクリル塗料やウレタン塗料を選べば、塗装工事の費用は削減できますが、これらの塗料は耐用年数が短めです。そのため、再塗装までの期間が短くなり、結果的に費用がかさむことが考えられます。

一方、シリコン塗料やフッ素塗料は価格が高い分、性能も高く耐用年数が長くなります。再塗装の回数が減るため、中長期的に考えると費用が安くなる可能性があるでしょう。

求める性能と価格のバランスを踏まえ、適切な塗料を選びましょう。

◇マンション住民と周辺住民に配慮する
マンションの規模や工事内容にもよりますが、塗装工事には数週間から数ヵ月の期間が必要です。その期間中は塗料のニオイや騒音、道路の進行阻害といった問題がどうしても起こってしまうため、塗装工事が周囲に与える影響は大きいでしょう。

特に塗料のニオイが発生すると、外に洗濯物を干せなくなったり、窓を開けられなくなったりして、トラブルに発展しかねません。

塗装工事のトラブルを未然に防ぐためには、あらかじめマンション住民と周辺住民に工事内容を周知し、理解を求めることが大切です。回覧板や掲示板で工事を行なう旨を通達する、周辺住民への挨拶回りをするなどして、配慮を忘れないようにしましょう。

■まとめ

大規模修繕における塗装工事は、マンションの外観を美しく保つだけではなく、建物の劣化を防ぐために必要不可欠です。塗装の剥離やひび割れ、鉄部の錆を放置すると、建物に深刻なダメージが生じます。

マンションの塗装工事を検討されている方は、無足場工法を採用しているOFFICE CHAMP(オフィスチャンプ)にぜひご相談ください。負担になりやすい足場代をカットすることで、上質な塗装工事をリーズナブルに提供します。

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