マンションの大規模修繕とは?修繕の内容や時期・手順、起こりやすいトラブルと対処法を解説

マンション運営においては、居住環境を維持し建物の資産価値を保つために、定期的な修繕が必要です。外壁の塗装や防水工事など、複数の工事を同時期に行なう修繕を大規模修繕と呼び、大規模修繕は12年周期を目安に実施されます。

大規模修繕をスムーズに実施するためにも、その概要を知り、計画的に準備を進めていきましょう。

本記事では、マンションの大規模修繕の概要や、修繕すべき時期、費用、手順を詳しく解説します。大規模修繕で起こりやすいトラブルとその対処法についても解説していますので、大規模修繕について知りたい方はぜひ参考にしてください。

■マンションの大規模修繕はなぜ必要?

大規模修繕は12年程度の周期で行なわれる修繕のことで、数週間から数ヵ月の期間を使って、マンションのさまざまな箇所を修繕します。

大規模修繕のおもな目的は、居住環境の改善です。マンションは常に風雨や紫外線などにさらされているため、定期的に修繕しなければ建物が劣化し、構造部にまで被害がおよぶ可能性があります。居住環境が悪化し建物の資産価値が低下するのを防ぐためにも、定期的な修繕が欠かせないのです。

なお、修繕には多額の費用がかかります。修繕にかかる費用を適切に積み立てるためにも、長期的な視野で修繕の計画を立て、修繕の準備を整えておくことが大切です。

■マンション大規模修繕の概要

マンションの大規模修繕では、具体的にどのような修繕を行なうのでしょうか。まずは、大規模修繕の概要と実施時期を見ていきましょう。

◇マンション大規模修繕の内容
大規模修繕の内容は、修繕と改修に大別されます。修繕は新築時にあった機能の回復を目的とした工事で、改修は機能・性能を向上させることを目的とした工事です。どのような修繕・改修を行なうべきかは、マンションの現状や住民からの要望をもとに決定します。

大規模修繕におけるおもな工事

  • 仮設工事:工事を行なうのに必要な足場を設置する工事
  • シーリング工事:外壁やタイルの隙間などを埋めるシーリング材を打ち替える工事
  • 塗装工事:外壁や鉄部を塗装する工事
  • 防水工事:屋上や外階段、バルコニーなどの床面に防水処理を行なう工事

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◇マンション大規模修繕の時期
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」に基づき、大規模修繕は12年周期で実施されることが多くなっています。ただし、近年は建物の高耐久化などにより周期が延長している建物もあるため、建物の状況によって修繕周期を判断する必要があります。

劣化は築年数に応じて進むため、修繕回数を重ねるたびに修繕の範囲は広がっていくのが一般的です。修繕範囲の広がりにともない、修繕費も増えていくため、修繕費の増加も見据えた長期計画を策定しておきましょう。

■マンション大規模修繕にかかる費用はどれくらい?

大規模修繕にかかる費用は建物の規模などによって異なりますが、数千万円~数億円にのぼる場合もあります。修繕費が不足して適切に修繕が行なえない、といった状況にならないよう、計画的に積み立てておきましょう。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、月々に必要な積立金の目安が紹介されています。

修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除く)

地上階数/建築延床面積 月額の占有面積あたりの修繕積立金額
事例の3分の2が 包含される幅 平均額
20 階未満 5,000㎡未満 235円~430円/㎡ 335 円/㎡
5,000㎡以上~ 10,000㎡未満 170円~320円/㎡ 252 円/㎡
10,000㎡以上~ 20,000㎡未満 200円~330円/㎡ 271 円/㎡
20,000㎡以上 190円~325円/㎡ 255 円/㎡
20 階以上 240円~410円/㎡ 338 円/㎡

参考:
マンションの修繕積立金に関するガイドライン|国土交通省

■マンション大規模修繕の手順【7ステップ】

マンションの大規模修繕は、数ヵ月間の長いスケジュールで行なわれます。修繕の手順を7つのステップに分けて見ていきましょう。

◇ステップ(1)修繕委員会の設立
大規模修繕の実施主体は、マンションの管理組合です。しかし、管理組合の役員が修繕にかかる事務作業などをすべて担うのは難しいため、修繕にかかる業務を専門的に行なう修繕委員会を設置して対応するのが一般的です。

修繕委員会では、どのように修繕を進めるのか、どこを修繕するのかなどを決定します。また、修繕に関して意見が出てまとまらなかった場合、修繕に関する最終意思決定を行なうのも修繕委員会です。

◇ステップ(2)現状分析
修繕内容を決める際には、まずはどのような修繕を行なうべきか建物を診断する必要があります。診断結果次第では、予定していなかった修繕が発生する可能性もあるでしょう。

また、住民アンケートをとって不具合や不満を把握し、修繕と併せて改修工事を検討する場合もあります。

ステップ(3)工事計画の策定
工事すべき箇所を洗い出したら、資金計画をふまえて工事計画を立てます。積立金が不足している場合は工事内容を見直して、優先順位の高い工事のみの実施や、一時金の徴収などを検討しましょう。

また、修繕工事に際しての事務作業を修繕委員会ですべて行なうのか、コンサルタントに事務を委託するのかなど、工事の進め方についても決定してください。

なお、代表的な工事の発注方式には、以下の3種類があります。

  • 責任施工方式
    管理組合と施工会社が直接契約する方式
  • 設計監理方式
    設計・工事監理と施工を別々に発注する方式。管理会社や設計事務所などが設計・工事監理を行ない、施工会社は施工のみ行なう。
  • コンサルタント方式
    コンサルトが発注者側に立ち、設計や発注などの支援を行なう方式

ステップ(4)施工会社選定
工事計画がまとまったら、複数の施工会社を比較し、施工会社を選定しましょう。施工実績・財務状況・見積もり項目などから総合的に判断し、価格の安さだけで施工会社を選ばないことが大切です。

◇ステップ(5)総会・工事説明会の開催
修繕工事の概要が固まったら、総会に諮ります。総会では工事の方向性や予算状況、施工会社を選んだ理由などを明確に説明し、透明性や公平性を重視することが大切です。総会での承認を得られたら、施工会社と契約を締結し、工事の具体的なスケジュールを決定してください。

工事説明会を複数回実施し、工事中の注意点などを組合員に説明します。工事に際して、ベランダの清掃が必要になるなど、組合員の協力が必要な場合があれば、説明会の時点で伝えておくことも大切です。

説明会で質問や疑問が出たら早めに回答し、スムーズに工事に移れるよう努めましょう。また、工事が始まるまえに、工事の騒音などの影響を受ける近隣住民にも挨拶し、理解と協力を求めておきましょう。

◇ステップ(6)着工
着工後は、工事が適切に行なわれているか、スケジュールに遅延がないかなどを、施工会社からの報告内容から確認します。

なお、施工中の騒音などにより、マンションの住民や周辺住民にストレスがたまり、思わぬトラブルが発生する可能性もあります。組合員の意見や質問があれば施工会社へ伝えて、問題の解決を図ってください。

ステップ(7)工事完了、アフターメンテナンス
施工後は建物・設備に不具合がないか確認し、不具合があればすぐに手直しを依頼しましょう。業者によっては、施工後一定期間に発見された不具合は、無償でメンテナンスしてもらえる場合もあります。修繕委員会や管理組合の目で、しっかりと確認することが重要です。

また、工事内容を記録した諸々の書類は、次回の修繕の参考として大切に保管してください。

■マンション大規模修繕で起こりやすいトラブル

大規模修繕では、修繕費用のトラブルや騒音トラブルなどの問題がしばしば発生します。工事をスムーズに行なうためにも、起こりやすいトラブルとその対処法を知っておきましょう。

◇修繕費用のトラブル
大規模修繕にかかる費用は、マンションの組合員全員で積み立てた修繕積立金によって賄われています。修繕積立金は想定される工事の内容から逆算して決定されており、金額はマンション管理組合が決定するのが一般的です。

ただし、想定していたものより修繕箇所が増えた場合や、物価高騰により修繕費が値上がりした場合などには、修繕積立金だけでは足りなくなる可能性があります。

費用が不足した場合は、追加徴収や積立金の値上げ、借り入れで対応できますが、出費が増える組合員からは反発が起こるおそれもあるでしょう。確実に修繕を行なうためにも、修繕費を多めに見積もり、適宜計画を見直して修繕積立金が不足しないよう注意しなければなりません。

◇施工中の騒音・振動などによるトラブル
施工中は騒音や振動、臭いなどが発生し、これらが原因でトラブルになってしまうこともあります。

大規模修繕工事では、作業のためにマンション全体を覆うように足場を組むのが一般的です。そのため、足場により周辺の道幅が狭くなったり、ベランダに洗濯物を干せなくなったりするなど、生活に影響が出ることがあります。悪意ある第三者が足場を利用して、建物内に侵入しようとするなど、防犯上の課題も発生するかもしれません。

また、これらの騒音・振動などによる影響は、マンションの居住者だけでなく近隣住民にもおよびます。施工中の騒音や振動を軽減できるような措置をとるほか、どれくらいの期間、どの程度生活に影響が出るのかを早めに周知し、理解と協力を求めることが大切です。

業者とのトラブル
施工業者の選定は慎重に行ないましょう。大規模修繕工事の実績が少なく、価格だけを売りにしている業者に施工を任せてしまうと、施工ミスや施工不足、施工遅延といったトラブルに発展しかねません。場合によっては、工事費用を追加請求されることもあるでしょう。

施工業者を選定する際には、実績は多いか、費用は適切か、担当者の対応は良いか、アフターサービスがあるかなどをチェックしましょう。複数の業者を比較して、より良い業者を選んでください。

■まとめ

大規模修繕工事はマンションの住環境を維持し、資産価値を保つ、重要な工事です。長期的な視点で計画を立て、必要な修繕を確実に行なえるようにしておきましょう。

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