マンションの修繕積立金は、マンションの機能を維持し、住民の生活環境を守るために欠かせない資金です。修繕積立金の設定を誤ると、修繕費が不足したり、マンションの住民から不満が出たりしてしまいます。
そうならないためにも、まずは修繕積立金の概要を知り、適切な金額を積み立てていくことが大切です。
この記事では、マンションの修繕積立金の概要や目安、修繕積立金の金額が上がる原因などを詳しく解説していきます。マンションに住んでいる方や、マンションを管理・運営している方は、ぜひ参考にしてください。
■マンションの修繕積立金とは?
修繕積立金はなぜ必要なのか、その目的を見ていきましょう。
◇マンションの修繕積立金の目的
マンションの住環境や資産価値を維持するためには、計画的な修繕が必要です。外壁や屋根、エレベーターなど修繕の対象はさまざまで、これらすべてを修繕するには多額の資金がかかります。
修繕が必要になったとき、修繕費を一括して用意するのは非常に困難です。そのため、将来的にかかる修繕工事の金額を試算し、その予測に基づいた修繕費を区分所有者全員で長期にわたり積み立てておかなければなりません。
修繕のために積み立てた金額を「修繕積立金」と呼びますが、修繕積立金を用意するためには、区分所有者全員の理解と協力が不可欠です。仮に修繕積立金が不足して修繕費用が足りなくなれば、必要な修繕工事を行なえず生活に支障が出てしまいます。
修繕積立金を確保できるよう、計画的に積み立てを実行しましょう。
◇マンションの管理費と修繕積立金の違い
マンションには、修繕積立金のほかにも「管理費」と呼ばれるものがあります。どちらもマンションの維持管理を目的とする資金ですが、以下のようにそれぞれ用途が異なります。
管理費の用途
- 共用部の掃除や点検
- 植栽の管理
- 管理員の人件費
- 共用部の日常的な管理
修繕積立金の用途
- 大規模な修繕
- 災害による損傷の修繕
- 修繕のために必要な調査
管理費も修繕積立金も、建物の階数や設備、築年数などによって金額が変動します。また、管理費と修繕積立金の経理は、分けて管理しなければならない点に注意しましょう。
◇マンションの修繕積立金は、長期修繕計画に基づいて設定される
修繕積立金は、将来に見込まれる修繕工事の内容、時期、概算費用を定めた長期修繕計画に基づいて金額が決定されます。修繕計画は5年程度の期間ごとに改訂されますが、その際に金額が変更になることもあります。
なお、長期修繕計画の詳しい内容については、国土交通省が作成した「長期修繕計画作成ガイドライン」に記載されていますので、興味のある方は併せてご覧ください。
■マンションの修繕積立金の平均値と目安
修繕積立金の平均値と目安を、国土交通省の資料をもとに解説します。
◇マンションの修繕積立金の平均額
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、1戸あたりの月々の修繕積立金平均額は以下のようになっています。
月/戸あたり修繕積立金
全体平均額 | 単棟型平均額 | 団地型平均額 | |
駐車場使用料金等からの充当額を含む場合 | 1万2,268円 | 1万1,875円 | 1万4,094円 |
駐車場使用料金等からの充当額を除く場合 | 1万1,243円 | 1万1,060円 | 1万2,152円 |
出典:国土交通省「Ⅱ.平成30年度マンション総合調査結果 〔概要編〕」
修繕積立金の1戸あたりの全体平均額は1万円/月前後です。修繕積立金は築年数や建物の階数などによって変化するため、金額はあくまで参考程度にしておきましょう。
なお、本調査において、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションは34.8%ありました。このことから、ここで示した平均額は本来必要とされる修繕積立金よりも低い可能性が考えられます。
◇マンションの修繕積立金の目安
続いて、マンションの修繕積立金の目安を見ていきましょう。目安は国土交通省が作成した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に示されています。
なお、ここでの目安はガイドラインに基づいて作成された、計画の事例(366事例)を分析したうえで設定されています。
地上階数/建築延床面積 | 月額の専有面積当たりの修繕積立金額 | ||
事例の3分の2が包含される幅 | 平均値 | ||
20階未満 | 5,000㎡未満 | 235円~430円/㎡・月 | 335円/㎡・月 |
5,000㎡以上~10,000㎡未満 | 170円~320円/㎡・月 | 252円/㎡・月 | |
10,000㎡以上~20,000㎡未満 | 200円~330円/㎡・月 | 271円/㎡・月 | |
20,000㎡以上 | 190円~325円/㎡・月 | 255円/㎡・月 | |
20階以上 | 240円~410円/㎡・月 | 338円/㎡・月 |
※機械式駐車場を除く
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
ただし、上記数値はあくまで目安です。実際の修繕積立金はマンションの状況によって変動する点に注意しましょう。
■マンションの修繕積立金の積立方法
修繕積立金のおもな積立方法には「均等積立」と「段階増額積立」があり、マンションによって積立方法が異なります。また、長期修繕計画の見直しにより、積立金や積立方法が計画途中で変更になる場合があるため注意しましょう。
均等積立と段階増額積立について、それぞれ解説します。
◇均等積立
均等積立とは、長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間中に均等に積み立てる方式です。
原則として積立金を増額しないため、区分所有者が負担額を把握しやすいというメリットがあります。ただし、修繕の状況に関わらず一定額を積み立てるため、多額の資金を管理する必要がある点に注意しましょう。
国土交通省のガイドラインでは、安定的な積み立てが可能であることから、修繕積立金は均等積立にするのが望ましいとされています。
◇段階増額積立
段階増額積立とは、計画期間当初は積立額を抑え、段階的に金額を増やす積立方式です。
初期の積立額を低く抑えられるというメリットがある一方、積立額を増やす際には区分所有者からの合意が得られない可能性がある点に注意が必要です。
段階増額積立は、初期費用が大きくなりやすい新築マンションに多く採用されています。
■マンションの修繕積立金が値上がりする原因
均等積立の場合、修繕積立金は毎月一定額となりますが、状況によっては月々の積立額が値上がりする可能性もあります。
最後に、修繕積立金が値上がりする原因を3つ解説します。
◇初期設定額が低い
修繕積立金が値上がりする要因として、まず初期の設定額が低いことが挙げられます。設定額が低い場合は、修繕費を回収するために積立額を値上げせざるを得ません。
値上げを避けられない状況であっても、家計への負担が急激に増えることがないよう、段階的に値上げするなどの対応をとる場合があります。定期的に計画を見直し、値上げ幅を抑えられるよう工夫することが大切です。
なお、段階増額積立の場合は、自動的に値上がりしていきます。積み立てで困ることがないよう、住宅の購入前に積立方式について確認しておきましょう。
◇修繕計画になかった修繕が発生した
先述のとおり、修繕積立金は長期修繕計画に基づいて決定されます。長期修繕計画で想定されなかった修繕(災害による修繕等)が発生した場合、計画を変更して修繕費を増やさなければなりません。
◇修繕費自体が値上がりしている
修繕に必要な材料費や労務費の値上がりにより、当初よりも修繕費が高額になり、積立額を値上げせざるを得ない場合もあります。
特に、大規模修繕の中心となるとび工、防水工、塗装工にかかる労務費は職人の高齢化や人手不足で値上がり傾向にあるため、修繕費も高額になります。
今後の材料費などの値上がりへ対処するためには、可能な限り余裕を持った積み立てが必要でしょう。
■まとめ
修繕積立金は、マンションを管理していくうえで必要不可欠なものです。住民の理解を得つつ、適切な金額を積み立てられるよう、計画的に積み立てを実行していきましょう。
積金額の急激な値上げを防ぐには、計画を適宜見直したり、値上げのタイミングを調整したり、修繕費を節約したりといった工夫が必要です。
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