大規模修繕の瑕疵保険に入るべき?瑕疵保険の特徴と加入のメリットを紹介

マンションのように複数の世帯が暮らす建物では、10数年ごとに大規模修繕工事が実施されます。大規模修繕は、管理組合等の発注を受けて専門の工事業者が行ないますが、施工不良によるトラブルが発生する場合もあります。そのため、専門知識に乏しい管理組合にとって、大規模修繕の実施には不安がともないます。

そこで工事完了後の瑕疵(かし:不具合や欠陥)に対し、管理組合を保護するために国土交通省が認可した補償制度が、大規模修繕の瑕疵保険です。この記事では、大規模修繕の瑕疵保険の特徴を解説するとともに、加入のメリットを紹介します。

■大規模修繕の瑕疵保険とは?

どのような建物でも、時間の経過とともに不具合や劣化が発生します。放置すると機能面や安全面に問題が生じるため、定期的なメンテナンスが必要です。特に、マンションのように複数の世帯が暮らす建物では、資産価値を下げないためにも計画的に大規模修繕が行なわれます。

大規模修繕はマンションの共有部分を対象として行なわれ、具体的には外壁補修工事や屋上防水工事のほか、給水管や排水管の交換、鉄部塗装工事などがあります。

大規模修繕の瑕疵保険は、工事を実施した箇所に瑕疵が見つかったときに備える保険です。加入するのは大規模修繕を請け負う工事業者で、瑕疵の修補にかかった費用等が保険金として支払われます。また、保険期間内に工事業者が倒産するなどした場合は、発注者(管理組合等)が直接、保険金を請求できます。

ただし、工事業者に瑕疵保険への加入義務はありません。そのため、工事業者を選定する際には、瑕疵保険に加入しているか否かを確認するとよいでしょう。なお、洪水や台風などの自然災害、火災や落雷、地震等によって生じた被害など、瑕疵保険が適用されない場合もあります。

■大規模修繕工事瑕疵保険の内容

次に、大規模修繕工事瑕疵保険の内容を解説します。

◇瑕疵保険の対象
瑕疵保険の支払い対象となるのは、おもに以下の費用です。

  • 修補費用
    修補の対象部分は保険商品によって異なりますが、おもに構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分のほか、給排水管路や灯油管路部分、給排水・電気・灯油・ガスに関する設備、手すり等が挙げられます。
  • 調査費用
    修補が必要な範囲の特定や、修補方法、金額などの調査にかかる費用です。
  • 仮住居・転居費用等
    対象住宅の修補期間中に、居住者が仮住居への転居を余儀なくされた場合にかかる費用です。宿泊費用や仮住居の費用、転居費用などが挙げられます。

上記のほか、瑕疵担保責任に関する争訟費用などが含まれる商品もあります。

◇瑕疵保険の仕組み
瑕疵保険に加入するには、大規模修繕工事の請負契約を結んだ登録事業者(大規模修繕工事業者)が、住宅瑕疵担保責任保険法人に保険の申し込みを行ないます。

保険期間中に対象部分に瑕疵が見つかった場合、工事業者の請求に基づき、保険法人は調査のうえで修補等にかかる費用を保険金として支払います。

◇瑕疵保険の期間、金額、保険料
瑕疵保険の保険期間は商品や対象部分によって異なりますが、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分はおおむね5年~10年間、手すり等は2年間の補償とされています。

保険金額(支払限度額)は請負金額によって異なり、一般的に1,000万円~5億円です。なお、瑕疵保険では、免責金額(10万円)や、縮小てん補割合(大規模修繕工事業者へは80%、工事業者の倒産等により発注者へ支払われる場合は100%)が定められています。

保険料は、工事内容や請負金額等に応じて、個々の保険法人が設定しています。保険の詳細については、保険法人への確認が必要です。

■大規模修繕工事の瑕疵保険に入るメリット

大規模修繕の瑕疵保険は管理組合を守るための保険ですが、工事業者にとってもメリットがあります。本章では、双方のメリットについて詳しく解説します。

◇瑕疵発生後の補修工事をスムーズに行なえる
工事業者は工事完了後の瑕疵に対し、無償で再修繕しなければならないため、なかには作業を後回しにする業者もあります。しかし、大規模修繕の瑕疵保険に加入している工事業者であれば、修補等にかかる費用が保険金として支払われるため、スムーズに着工してもらえます。

万が一、工事業者が倒産等により瑕疵担保責任を履行しない場合にも、発注者が直接保険金の請求を行なえます。発注者は、その保険金をもとに別の工事業者への依頼が可能です。そのため、施工不良による瑕疵がそのまま放置されたり、余分な費用がかかったりするおそれがありません。

また、瑕疵保険の締結に際しては、保険法人の定める設計施工基準に適合する必要があります。そのため、保険法人の検査員(一級建築士等)が、工事着工前や完了時に現場検査を行ないます。このように第三者が入ることで、工事の品質が担保される点もメリットといえるでしょう。

◇マンション側の金銭的負担がない
瑕疵保険に加入するのは大規模修繕を請け負う工事業者であり、マンション側の金銭的負担はありません。工事業者にとっても、保険に加入することで瑕疵発生後の修補費用等を抑えられるメリットがあります。

他にも、大規模修繕において瑕疵が発見されると、それが経年劣化によるものか瑕疵によるものかなど、管理組合と工事業者の間で紛争になる場合があります。瑕疵保険に加入していると、このようなトラブル時にも保険法人が間に立ってくれるため、専門知識のない管理組合も安心して大規模修繕を発注できます。

■大規模修繕瑕疵保険は5種類

大規模修繕の瑕疵保険を提供できる保険法人は、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(第17条)の規定に基づき国土交通大臣に指定された、以下の5社です。

◇あんしん大規模修繕工事瑕疵保険|株式会社住宅あんしん保証
「あんしん大規模修繕工事瑕疵保険」は、株式会社住宅あんしん保証が提供する保険です。

延床面積が500平方メートル以上または地階を含む階数が4以上の共同住宅の共用部分を対象とし、保険期間は原則として、大規模修繕工事完了日から起算して5年間になります。累計7,800棟以上(※)の実績を持ち、さまざまな特約や割引制度があります。
(※)2023年3月末の累計引受実績

◇まもりすまい大規模修繕かし保険|住宅保証機構株式会社
「まもりすまい大規模修繕かし保険」は、住宅保証機構株式会社が提供する保険です。4階建て以上または500平方メートル以上の分譲共同住宅および賃貸共同住宅を対象とし、保険期間は工事対象箇所により1~10年間です。

保険金として補修費用、調査費用、仮住居・移転費用のほか、事業者が負担する臨時代替駐車場費用、家財等一次移動・保管費用など臨時費用が補償されます。

◇JIO大規模修繕かし保険|株式会社日本住宅保証検査機構
「JIO大規模修繕かし保険」は、株式会社日本住宅保証検査機構が提供する保険です。
1住棟の延床面積が500平方メートル以上または総階数が4以上の共同住宅の共用部分を対象とし、保険期間は手すり等(2年間)を除き5年間です。ただし「屋上・屋根防水工事保険期間延長特約」を付帯すると、屋根(屋上およびルーフバルコニーを含む)に関する保険期間が10年間に延長されます。

なお、保険加入の条件としてJIOへの大規模修繕事業者登録を行ないます。登録の有効期間は1年間で、1年ごとに更新が必要です。

◇大規模修繕かし保険|株式会社ハウスジーメン
「大規模修繕かし保険」は、株式会社ハウスジーメンが提供する保険です。

階数4以上または延床面積500平方メートル以上の中・大規模共同住宅の共用部分を対象とし、保険期間は工事完了後の現場検査の適合日から10 年間です。特徴として着工前の現場検査を行なわないため、着工のタイミングで保険の申し込みが可能です。

◇大規模修繕工事のかし保険|ハウスプラス住宅保証株式会社
「大規模修繕工事のかし保険」は、ハウスプラス住宅保証株式会社が提供する保険です。

延床面積が500平方メートル未満かつ階数が3以下の住宅を除く、RC・SRCまたは鉄骨造の住宅を対象としています。保険期間は手すり等(2年間)を除き、工事完了日から5年間です。ただし、雨水の浸入を防止する部分のうち付保住宅の屋根については、「屋上防水工事に係る保険期間延長特約」の付帯により10年間に延長されます。

また、「タイル剥落特約(10年間)」の付帯も可能です。詳しくはホームページをご覧ください。

■まとめ

大規模修繕の瑕疵保険は、工事完了後に瑕疵が見つかった場合の備えとなる保険です。管理組合にとっては、工事業者に速やかに再修繕に取りかかってもらえ、工事業者が倒産した場合にも保険金を請求できるなどのさまざまなメリットがあります。

瑕疵保険への加入は大規模修繕を請け負う工事業者ですが、加入義務はありません。そのため管理組合は、工事業者を選定する判断材料の一つとして、瑕疵保険加入の有無を確認するとよいでしょう。

オフィスチャンプは、ビル・マンションの外壁工事を専門としています。足場を必要としない工法と、自社職人の育成により外注費用を抑えることで、コストダウンが可能です。ビルやマンションの大規模修繕をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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