マンションの建物や設備を維持するためには、大規模修繕が欠かせません。特に「防水工事」は耐久性や耐震性などに関わってくるため、確実に実施する必要があります。
そのため、防水工事の依頼にあたり、工事内容が知りたいという方もいるのではないでしょうか。工事内容を把握しておくことで、依頼内容の検討や業者選びにも役立ちます。
本記事では、防水工事の重要性を踏まえつつ、大規模修繕における防水工事の種類や流れ、注意点について詳しく解説します。マンションの防水工事を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
■防水工事は大規模修繕の要
マンションの大規模修繕では、防水工事がプランに組み込まれているケースがほとんどです。
そこでまずは、マンションの防水工事が必要な理由と、防水工事を施すべき箇所について解説します。
◇防水工事が必要な理由
マンションは、常に風雨にさらされています。建物の防水機能が衰えると、雨水が建物内部にまで侵入し、構造部が劣化してしまうことがあるため、定期的な防水工事による予防が大切です。
木造建築であればともかく、マンションのような鉄筋コンクリート造の建物が雨水で劣化することは考えにくいかもしれません。
しかし、水分の蒸発にともなって「乾燥収縮」という現象が起こると、コンクリートにひび割れが生じます。コンクリートがひび割れを起こすと内部の鉄筋が錆びて体積が増し、さらにコンクリートを破損させることになりかねません。
また、構造部の劣化は耐震性にも悪影響をもたらします。頻繁に地震が起こる日本では、建物の耐震性を維持するためにも、防水工事が必要不可欠といえるでしょう。
◇防水工事すべき箇所
マンションの防水工事は、屋上・屋根・外階段・バルコニーなど、風雨にさらされる床面をメインに施工します。施工箇所によって最適な工法は異なるため、業者とよく相談したうえで決めることが大切です。
屋上・屋根は既存の状況に合わせて防水処理を施しますが、特に屋上は念入りに施工する必要があります。マンションの屋上はほとんど傾斜がない分、戸建て住宅の屋根ほど排水力が高くなく、防水機能が低下した際の被害も拡大しやすいからです。
バルコニーなど防水工事に足場が必要な箇所については、費用と時間がかかりやすいため、大規模修繕と併せて依頼することをおすすめします。また、バルコニーは入居者への影響が大きいため、外観にもこだわって施工するとよいでしょう。
■大規模修繕における防水工事の種類4選
大規模修繕で行なう防水工事は、大きく分けると以下の4種類です。
- ウレタン防水
- シート防水
- アスファルト防水
- FRP防水
各工法の特徴・メリット・費用相場・耐用年数などについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
◇ウレタン防水
ウレタン防水とは、ウレタン樹脂を重ね塗りして防水層を形成する工法のことです。1平方メートルあたり3,500~6,000円程度と、比較的安価で行なうことが可能です。液体を塗布するという性質上、複雑な形状の屋上や屋根にも対応でき、屋上の防水工事での主流となっています。
ウレタン防水には、直接床面に防水処理を施す「密着工法」と、床面に通気マットを敷いてから防水処理を施す「通気緩衝工法」という2種類の工法があります。屋上防水の場合、比較的耐久性の高い後者が多用されています。
なお、ウレタン防水の耐用年数は10~12年程度ですが、これは他の工法に比べるとやや短めです。また、防水層を均一にする必要があり、職人の腕によって仕上がりが左右されやすい点にも注意しましょう。
◇シート防水
シート防水とは、ゴム製や塩化ビニール製のシートを敷くことで防水層を形成する工法です。短期間で広範囲をカバーできるため、屋上の防水工事によく採用されます。費用は比較的安価であり、1平方メートルあたり4,000~5,000円程度で施工可能です。
また、シート防水には、接着剤で貼付する「接着工法」と、固定ディスクというパーツで固定する「機械的固定工法」の2種類があります。前者は耐風圧性に優れていますが、平らな下地でないと施工できない工法です。後者は下地の影響を受けにくく、近年の主流になっているものの、施工時に振動・騒音が発生しやすいデメリットがあります。
シート防水の耐用年数は、10~15年程度です。シート状の防水材を用いる性質上、形状が複雑な箇所の施工には向かないことも覚えておきましょう。
◇アスファルト防水
アスファルト防水とは、アスファルトを合成繊維不織布に含ませてコーティングした「ルーフィング」というシート状の防水材を貼り重ねる工法です。価格は1平方メートルあたり4,500~8,000円程度と比較的高めですが、マンションの防水工事に長く使われてきた工法で、耐久性にも優れています。
また、アスファルト防水には、3種類の工法があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 保護工法
溶解アスファルトとルーフィングで防水層を作り、コンクリートなどを表面に流し込む工法です。歴史が長く、信頼性が高い特徴があります。 - 露出工法
保護工法と同じように防水層を作ったあとに、保護塗料を表面に塗布して紫外線を防ぐ工法です。上記の工法より、建物に重みがかかりません。 - トーチ工法
改質アスファルトを使ったルーフィングシートを、トーチバーナーにより溶接して防水層を作る工法です。水密性が高い特徴を持ちます。
アスファルト防水の耐用年数は、13~20年程度です。施工に手間はかかりますが、施工直後から防水機能を発揮します。
◇FRP防水
FRP防水とは、ガラス繊維強化プラスチック製(FRP)のシートを床面に敷き、ポリエステル樹脂を上から重ね塗りして防水層を作る工法です。紫外線や強風によるダメージを防ぐために、ポリエステル樹脂が硬化したら、トップコート(表面保護塗料)を塗布します。価格は1平方メートルあたり5,000円~7,000円程度です。
FRPシートは耐久性・耐水性・耐候性などに優れ、なおかつ軽量です。高い防水機能を発揮するため、屋上だけでなくバルコニーなどにもよく使用されています。速乾性にも優れているため、施工が1~2日で終わるメリットもあります。
なお、FRP防水の耐用年数は10~15年程度です。全体的に高い性能を持ちますが、施工時に異臭が発生する、コストが高いというデメリットもあります。
■防水工事の流れ
マンションの防水工事の流れを把握できるよう、ウレタン防水とFRP防水の工程を事例として紹介します。
【ウレタン防水(通気緩衝工法)】
- 高圧洗浄
コンクリートに付着した汚れやホコリなどを取り除きます。 - 下地補修
下地にひび割れなどがある場合、コーキング処理を施します。 - 下地・ケレン処理
伸縮目地を撤去し、表面全体を均一化して下地を作ります。 - プライマー塗布
下地に、接着剤の役割を果たすプライマーを塗布します。 - シート処理
空気が入らないよう、通気緩衝シートを丁寧に貼り付けます。 - ウレタン塗布(中塗り)
ローラーなどの工具を使い、ウレタン樹脂を塗布します。 - ウレタン塗布(上塗り)
工程6のウレタン樹脂が硬化したら、再度塗布します。 - トップコート塗布
工程7のウレタン樹脂が硬化したら、仕上げにトップコートを塗布します。
【FRP防水】
- 高圧洗浄
コンクリートに付着した汚れやホコリなどを取り除きます。 - 下地補修
下地にひび割れなどがある場合、補修を行ないます。 - 下地・ケレン処理
ケレン処理を行ない、表面全体を均一化します。 - プライマー塗布
下地に、接着剤の役割を果たすプライマーを塗ります。 - ガラスクロス貼り(1層目)
ポリエステル樹脂を塗布し、ガラスクロスを密着させるようにしながら貼り付けます。 - ガラスクロス貼り(2層目)
工程5のガラスクロスの上からポリエステル樹脂を塗布し、2層目のFRPシートを貼り付けます。 - 気泡除去
気泡があると漏水の原因になるため、ローラーで取り除きます。 - 表面調整
樹脂が硬化したら、研磨機などを使って防水層の表面を滑らかにします。 - トップコート塗布
仕上げにトップコートを塗布します。
■大規模修繕における防水工事の注意点
マンションの大規模修繕で防水工事を行なう場合、注意すべきポイントは以下の2点です。
- 工事後の完了検査・定期点検を忘れずに
- 実績のある業者に依頼する
それぞれ、具体的に解説します。
◇工事後の完了検査・定期点検を忘れずに
大規模修繕が完了したら、施工業者やマンションの管理人、管理組合員などを交えて完了検査を実施します。工事内容に合わせて各箇所をチェックしますが、防水工事を行なった箇所は防水層のひび割れがないか慎重に確認することが大切です。
仕上がりの細かい部分を素人目で判断することは困難ですが、ひび割れは比較的わかりやすいため、屋上やバルコニーの隅々までチェックしましょう。特に大きなひび割れが発生していると、そこから雨水が入る可能性があるので、すぐ対処してもらう必要があります。
そして、工事後も定期的に点検し、劣化している箇所がないか確認しましょう。ひび割れ、防水層の浮き、塗膜の乖離などが見つかったら、早めに業者に相談することをおすすめします。
◇実績のある業者に依頼する
マンションの防水工事に施工不良があると、再度工事が必要になったり、マンション住人の生活に影響したりすることが考えられます。そのため、防水工事を実施する際には、実績豊富かつ信頼性の高い業者に依頼することが大切です。
質の高い業者を見つけるためには、あらかじめホームページや比較サイトで情報を集めましょう。大規模修繕における防水工事の実績はもちろん、施工事例、資本金、口コミ、対応地域などもチェックしてください。複数の業者に見積もりを依頼して、担当者の対応がスムーズかどうか比較することも重要です。
また、施工不良などのトラブルを想定し、保証期間やアフターフォローの有無も確認することをおすすめします。
■まとめ
マンションは常に風雨にさらされているので、大規模修繕における防水工事は必要不可欠です。建物の防水機能が低下すると、雨水がコンクリートの内部にまで侵入し、重要な役割を担う構造部も劣化することになりかねません。
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