マンションの躯体や設備は年を経るごとに劣化していくため、定期的な修繕が必要です。定期的に修繕することで、建物の機能性を向上させるだけでなく、建物の資産価値を維持することにもつながります。
修繕のなかでも、十数年おきに実施される大掛かりな修繕を「大規模修繕」と呼びます。大規模修繕には多くの費用と時間が必要なため、計画的に準備する必要があるでしょう。
本記事では、修繕内容や周期、費用など、大規模修繕の基礎知識について解説します。今後、マンションの大規模修繕を予定している方は、ぜひ参考にしてください。
■大規模修繕とは?
大規模修繕とは、マンションの経年劣化の状況に応じて定期的に実施する、大規模な修繕工事のことです。マンション全体をメンテナンスするため、日常的な修繕よりも工期が長く、多額の費用がかかるという特徴があります。
大規模修繕のおもな目的は以下のとおりです。
- 経年劣化や重大な不具合の発生を予防する
- 古くなった設備を一新し、機能性を上げる
- 建物の資産価値を維持・向上させる
- 建物の美観を新築当時の状態に近づける
これらの目的を達成するため、大規模修繕は管理組合が作成した長期修繕計画をもとに実施されます。
長期修繕計画とは、いつ・どのような修繕を実施し、その修繕のために毎月どれくらいの費用を積み立てていくのかまとめたものです。
マンションの躯体や設備は、ただそこにあるだけで劣化していきます。劣化を想定して計画的に修繕を行なうことは、マンションの維持管理において非常に重要なポイントだといえるでしょう。
建物の資産価値を維持し、マンション利用者の生活を向上させるためにも、大規模修繕に備えておく必要があります。
■「修繕」と「改修」の違い
マンションの大規模修繕工事では、「修繕」と同時に「改修」も行なう場合があります。修繕と改修は言葉が似ていますが、その内容には明確な違いがあるので、それぞれ見ていきましょう。
◇「修繕」とは?
「修繕」とは、経年や雨風などの外的要因によって発生した劣化・不具合に対して、修理や設備の交換などの工事を行なうことです。
修繕は応急処置的な位置付けでは行なわれません。問題のある部分の性能や機能を建設当初の水準まで戻すことを目標に実施されます。
修繕には、定期的に行なう大規模修繕のほかに、建物の一部に修繕が必要になるたびに実施される「補修」もあります。
建物や設備は必ず劣化するため、劣化を補うための修繕は避けられません。建物や設備ごとに設定された耐用年数を目安に、どのような修繕が必要なのかをあらかじめ確認しておくことが大切だといえるでしょう。
◇「改修」とは?
「改修」とは、時代の流れとともに変化していく住環境へのニーズに対応するため、建設当初よりも高い性能や居住性の獲得を目指して行なわれる工事のことです。
利用者の生活スタイルによって、求められる間取りや設備は変わります。例えば、子育て世代には子ども用に複数の部屋が必要となり、高齢者には手すりのついた広いトイレや浴室が必要となるでしょう。
また、マンションを建設したあとには、より良い設備や材料が次々登場するものです。古くなった設備を最新のものに交換すれば住環境が改善され、利用者の利便性が向上します。さらに、新規入所者獲得につながる可能性もあるでしょう。
このように、改修によってマンションの性能をグレードアップすると、より住みやすい居住空間の実現が可能です。
修繕は建設当時の状態に戻すものであるため、修繕だけでは、変化する住環境や生活スタイルに柔軟に対応することはできません。
修繕が「リフォーム」なら、改修は「リノベーション」にあたると考えると、イメージしやすいでしょう。
■大規模修繕のおもな内容
大規模修繕の内容は、建物の築年数や劣化状況によって異なります。
ここでは、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」で、推定修繕工事項目として挙げられている19項目を紹介します。
推定修繕工事項目 | 対象部位など | |
1 | 仮設工事 | |
2 | 屋根防水 | 屋上、塔屋、ルーフバルコニー、屋根 など |
3 | 床防水 | バルコニーの床(側溝、幅木含む)、開放廊下・会談の床(側溝、幅木含む) |
4 | 外壁塗装など | 外壁、屋根、床、手すり壁、軒天、ひさし、スリープ周り など |
5 | 鉄部塗装など | 開放廊下、階段、バルコニーの手すり、屋上フェンス、自転車置場、住戸玄関ドア など |
6 | 建具・金物など | 住戸玄関ドア、共用部ドア、自動ドア、窓サッシ、面格子、網戸、シャッター など |
7 | 共用内部 | 管理事務室、集会所、内部廊下、エントランスホール、エレベーターホールの壁 など |
8 | 給水設備 | 屋内共用給水管、屋外共用給水管、受水槽、揚水ポンプ、加圧給水ポンプ など |
9 | 排水設備 | 屋内共用雑排水管、汚水管、雨水管、排水ポンプ など |
10 | ガス設備 | 屋外埋設部ガス管、屋内共用ガス管 |
11 | 空調・換気設備 | 管理事務室・集会室などのエアコン、管理事務室・集会室・機械室・電気室などの換気扇 など |
12 | 電灯設備など | 共用廊下・エントランスホールなどの照明器具、非常照明、避難口・通路誘導灯、外灯 など |
13 | 情報・通信設備 | 電話配線盤(MDF)、アンテナ、増幅器、分配器、インターホン設備、オートロック設備 など |
14 | 消防用設備 | 消火栓ポンプ、消化管、ホース類、感知器、発信機、表示灯、送水口、排水口 など |
15 | 昇降機設備 | カゴ内装、扉、三方枠 など |
16 | 立体駐車場設備 | プレハブ造(鉄骨造+ALC)、二段方式 など |
17 | 外構・付帯施設 | 平面駐車場、車路・歩道などの舗装、側溝、排水溝、遊具、ごみ集積所 など |
18 | 調査・診断、設計、工事管理等費用 | 大規模修繕の実施前に行なう点検・調査・診断、コンサルタント、計画修繕工事の工事監理 など |
19 | 長期修繕計画作成費用 | 長期修繕計画の見直しのための点検・調査・診断、長期修繕計画の見直し |
参考:国土交通省|長期修繕計画作成ガイドライン (様式第3-2号) 推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容
■大規模修繕の周期
大規模修繕の周期は明確に定められているわけではありませんが、12年周期とするのが一般的です。
しかし近年では、入居者の修繕積立費の負担を軽減するため、大規模修繕を18年周期で行なう場合もあります。周期を長くすると費用負担は減らせますが、そのぶん修繕が遅れてしまい、結果的に修繕費が高くなってしまう可能性もあります。
修繕の周期を調整するメリットとデメリットを理解し、マンションの状態に合ったタイミングで大規模修繕を実施しましょう。
なお、大規模修繕の周期について、より詳しい情報は以下の記事に記載しているため、ぜひこちらも参考にしてください。
関連記事:マンションの大規模修繕の周期は何年?周期を伸ばす際の注意点についても解説
■大規模修繕にかかる費用
大規模修繕にかかる費用は、建物の規模や工事内容などによって大きく異なります。
国土交通省が平成29年に実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕にかかる1戸あたりの工事金額は以下のとおりです。
- ~25万円:6.8%
- 26万円~50万円:6.0%
- 51万円~75万円:13.8%
- 76万円~100万円:30.6%
- 101万円~125万円:24.7%
- 126万円~150万円:9.6%
- 151万円~175万円:4.8%
- 176万円~200万円:1.5%
- 201万円~:2.2%
参考:国土交通省|マンション大規模修繕工事に関する実態調査 大規模修繕工事回数と戸あたりの工事金額
全体の8割超のケースで、1戸あたりの修繕費は125万円以内におさまっているため、この金額が修繕費の目安と考えてよいでしょう。
なお、大規模修繕にかかる費用について、より詳しい情報は以下の記事を参考にしてください。
関連記事:大規模修繕にかかる費用目安はいくら?費用を抑えるポイントも併せて紹介
■まとめ
マンションで定期的に行なわれる大規模修繕には、建物や設備の資産価値維持や機能性の向上などの効果が期待できます。大規模修繕の内容や周期は、マンションの経年劣化の状況などによって異なるため、事前調査をふまえて慎重に検討することが大切です。
大規模修繕には多額の費用と工期がかかります。修繕をスムーズに行なえるよう、計画的に資金を集めて大規模修繕に備えましょう。
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