鉄筋コンクリート造のビルやマンションの外壁塗装工事の際に並行して行う「下地補修」でありますが、この下地補修を行う意義や施工方法などを出来るだけわかりやすく、詳しく説明していこうと思います。
■下地補修工事とは
下地補修工事は外壁塗装工事を行う際に、ひび割れや欠損、爆裂などを補修するわけですが、これは美観を回復する目的だけではなく「建物の躯体を保全する」という目的も含まれており、下地補修工事を行う意義としてはこちらの方が大きいと言えるのではないでしょうか。
■外壁の不具合について
新築から10年も経つと見た目にもはっきりと不具合が出てきます。外壁塗装面の不具合について主にどういった不具合があるのか列挙してみます。
◎ひび割れ(クラック)
◎欠損
◎爆裂
◎モルタル浮き
◎塗膜剥離
上記が鉄筋コンクリート造り(RC)のビルやマンションの不具合として考えられる代表的なものなりますが、これらの不具合が一般外壁やバルコニーの手摺壁(腰壁)階段の内壁等、塗装で仕上がっている壁面に目立って発生しているのであれば外壁塗装工事の検討に入る必要があります。
■下地補修工事を行う前に
外壁塗装面にも様々な不具合がありますが、所謂ビルやマンションの大規模修繕工事などでは着工時に外壁調査から入ります。
これは、お見積りを立てる際の現地調査では、経験値として「通常より下地が悪そうだな」くらいしか把握できず全ての不具合の内容と数量を把握する事が不可能である為です。
従ってお見積りでは外壁塗装面の面積の○%という係数を乗じて想定の数量を出します。その後実際に工事が始まってから外壁調査を開始、お見積りと実際の数量との差を増減して正式なお見積りとなります。
調査は、下画像のように金属製の打診棒と呼ばれる道具を使用し、壁面をたたきながら(正確には転がすような感じで)打診音や、目視で不具合を判定していきます。
■下地補修工事の工法について
下地の不具合内容はいくつかありますが、本項では下地の不具合に対するそれぞれの工法を解説していきたいと思います。
◇Uカットシーリング工法
弊社基準では0.3mm以上のひび割れに対して適用する工法となります。RC造りのひび割れで幅0.3mm以上のひび割れは比較的大きめなヒビとして扱います。
0.3mm以上のひび割れに対して ディスクグラインダー等の電動工具でなぞっていきます。幅10mm程度、深さ10~15mm程度が一般的なUカットのサイズです。
ディスクグラインダーで溝を掘る際かなりの粉塵が発生します。そのためUカットシーリング工法で溝を掘る際はゴーグルとマスクが必須となります。
掘った溝にシーリング材を充填する前に専用のプライマーをしっかり塗り、その溝の半分ぐらいの深さまでシーリング材を充填します。このUカットシーリング工法、ヒビ割れたタイルを剥がした下地にヒビが入っている場合にも適用します。その場合は溝の半分ではなくUカットした部分のツラまでシーリング材を充填し、タイルを張り戻します。
シーリング材を溝の深さの半分まで充填した後、残りの半分にポリマーセメントモルタルやエポキシ樹脂モルタルを充填し平滑に仕上げます。Uカットした部分を中心に10cm程度、ディスクグラインダーで既存の塗装パターンが消す工程が入る場合もあります。
樹脂モルタルで補修箇所を平滑に仕上げた後は微弾性フィラーと呼ばれる下地調整材兼下塗り材を
塗ります。
微弾性フィラーは塗装工事に下塗りで良く使用される下塗り材ですがその名前の通り
「微」弾性があり(微というぐらいなので確かにわずかな弾力です)その材料的な粘りで細かい
ひび割れなどを潰してくれるため重宝される下塗り材です。その材料を砂骨(サコツと呼びます)
ローラーと呼ばれる目の粗いスポンジのような特殊なローラーを使用して既存の塗装面のような
さざ波の模様を付けてから上塗り材=塗料で塗装します。(写真の真ん中の方のパターンが少し
乱れている為やり直させました)塗装はもちろん2度塗りとなります。
実は私、このUカットシーリング工法は補修跡がどうしても目立ってしまって個人的にはあまり
好きな工法ではないです。(画像の仕上がりはかなりいいレベルです)モルタル充填の解説でも述べましたが Uカットした部分を中心に10cm程度、ディスクグラインダーで既存の塗装パターンが消し再度パターンを付けなおせば目立たなくなるのですが、大規模修繕ではコストが優先されがちになる為、おそらくほとんどの現場では上記手順での補修となっていると思います。
弊社では現在、幅広のヒビの補修について、別の工法を模索中でその候補の補修材をいろいろな現場で使っています。結構評判は良いので機を見て解説したいと思います。
◇モルタル浮きエポキシ樹脂注入ピンニング工法
エポキシ樹脂注入ピンニング工法といえば主にタイルの下地浮きの補修で適用されるイメージがありますが、新築時コンクリート打設~型枠解体後後、躯体の補修で使用されているモルタルが浮いている可能性がありますので塗装面も打診調査を行います。築年数が新しいビルやマンションは型枠の精度が高く、モルタルの浮きはかなり少なくなってきています。
振動ドリルや無振動ドリルを使用して(写真は無振動ドリル)躯体に6mm程度の穴を開けます。深さは下地調整モルタルをの下、躯体に30mm以上達する程度迄とします。
穿孔した箇所に注入用のグリースガンでエポキシを注入していきます。 浮き代(コンクリートとモルタルの浮き部分の隙間)が少ないなかなか入りづらい事もあるのですが、グリースガンの角度を変えたりすると入っていったりするので施工側の工夫が必要です。
エポキシ樹脂注入後エポキシが固まる前に太さ4mm程度のステンレス製のピンを封入して下地コンクリートとモルタルを物理的に固定し、より浮き固定の確実性を増すようにします。
注入後、パテ状エポキシ等で穴を塞ぎ(すみません、穴が塞がっている写真が見当たりませんでした)ます。後で外壁を塗装して仕上げます。穴が5~6mm程度と小さい為、補修跡はほとんど目立ちません。
◇爆裂・欠損補修
爆裂はコンクリートの鉄筋が腐食して表面のモルタルやコンクリートが剥離、脱落している箇所の事を言います。通常、壁面コンクリートの鉄筋は躯体表面から40~50mm程度の深さの部分に配筋されていますが施工が悪く浅い位置に配筋された場合やコンクリートのひび割れなどから雨水が侵入した場合などで鉄筋が錆び、錆が膨らんでコンクリートやモルタルが前に飛び出してしまう現象です。脱落してしまう場合も多々あります。
鉄筋が錆び爆裂している部分を斫り取ります。
爆裂箇所を斫り取ったのちに鉄筋のさび落とし及び清掃後エポキシ樹脂モルタル用のプライマーを塗布します。このプライマーは錆止めも兼用します。通常の欠損の場合は鉄筋が絡んだものではないのでさび落としの工程はなく斫り屑を清掃後すぐにプライマー塗布となります。
爆裂箇所にエポキシ樹脂モルタルを充填金鏝で平滑に慣らして仕上げます。
◇塗膜浮き・剥離箇所補修
躯体から塗膜が浮いている若しくは剥離している状態です。雨水の侵入などにより塗膜が浮いたり剥離したりする場合が多く見られます。
外壁調査により塗膜の剥がれが見つかった部分についてマーキングしていきます。既存の塗膜に厚みがある為、躯体とは多少段差がある状態です。
躯体との段差をポリマーセメントモルタルで修正しているところです。写真ではヘラを使っていますが大きい面積の場合は鏝を使う場合もあります。
段差を修正した後に完成となります。本物件では壁面全体を塗装する為、補修箇所に周辺同様のさざ波模様を付けたうえで塗装工程に入ります。
■まとめ
外壁塗装面における下地補修工事は建物自体の美観を回復させるためだけでなく、建物の老朽化を食い止め建物の保全に寄与する非常に大事な項目であります。
弊社では足場を掛けない外壁工事を得意としており、足場が不要である為、外壁塗装を行わなくても不良個所をピンポイントで補修したり、都度足場代が不要であることから、1期工事で外壁調査~下地補修~タッチアップで塗装、2期工事で外壁塗装とシーリング工事といった分割工事などなども得意としているところです。
ビル・マンションの外壁工事専門業者のOFFICE CHAMP(オフィスチャンプ)では足場を掛けずに経費削減で通常より割安且つ丁寧な施工を心がけております。また丁寧な現地調査行った上での詳細なお見積りを作成しお客様に適正な価格で納得してもらう施工をモットーにしております。
「ビル・マンションの外壁塗装を検討している」「予算が無いので工事を分割して行いたい」等お考えの方がいらっしゃいましたら是非オフィスチャンプにご相談ください。