ビルやマンションのひび割れ補修 Uカットシーリング工法とは
外壁の塗装工事において下地の補修工事項目でひび割れを直すのは一般的によくある内容です。業界ではひび割れの事をクラックと呼びますが、特に大規模修繕工事における塗装工事の前段階として塗装面の下地補修をする場合、そのひび割れの幅によって工法を変えて対応していきます。
例えば弊社の場合、クラックの幅が0.3mm未満と0.3mm以上の2つに分けて0.3mm未満の場合はポリマーセメントフィラーやシーリング材、微弾性フィラー等を直接ひび割れに摺込み、ひび割れをつぶすような形で補修し、0.3mm以上は「Uカットシーリング工法」と呼ばれる工法で補修します。
■Uカットシーリング工法
電動のカッター(ディスクグラインダー)を使ってU字の溝を掘っていき、そこに「可とう性エポキシ樹脂」や「弾性シーリング材」を充てんする工法です。Uカットシーリング工法は「Uカットシーリング材充填工法」や「Uカットシール」などとも呼ばれ内容的には全て同じとなります。
1.ディスクグラインダーなどでU字に溝を作ります。
ひび割れの真上から「U溝カッター」と呼ばれるホイール状のディスクを取り付けたディスクグラインダーで幅10mm程度、深さ10~15mm程度の溝を掘っていきます。入隅や形状が複雑な場合は細かい部分まで入り込める棒状の溝切研磨器具を使用して溝を掘っていく場合もあります。
2. 施工部を清掃します。
Uカットする際、かなりの粉塵が発生します。ハケやブラシなどをつかい溝の内部に残ったほこりや、チリなどを清掃をします。刷毛のほかにもエアーダスターなどを使う場合もあります。粉塵が多く残っていると次工程のシーリングの密着を妨げることになる為非常に重要な作業となります。
3. シーリング材専用のプライマーを塗布します
使用するシーリング材のプライマーを万遍なく塗布します。
4.シーリング材を充填します。
溝を掘った部分を清掃、プライマー塗布後シーリング材を充填していきます。シーリング材の充填量は掘った溝の深さの半分程度より多少多いぐらいまで充填します。この時使用するシーリング材は可とう性エポキシを使用しますが挙動が大きいと思われる場合はノンブリードタイプのウレタンシーリング材を使用する場合もあります。(使用するシーリング材について、可塑剤の影響で施工後しばらくして施工箇所が黒変(ブリード)する場合がありますので「ノンブリード」であることは必須となります。)
5.充填されたシーリング材をヘラで均します。
充填されたシーリング材を所定の深さになるようにヘラで均していきます。はみ出してしまった場合はその部分を平らにして仕上げます。
6.ポリマーセメントモルタルを充填します。
掘った溝の残りの部分にポリマーセメントモルタルを充填し廻りと段差が無いように仕上げます。
7.周辺の塗装とパターンを合わせます。
廻りとパターン(塗装の模様)を合わせた上で塗装を行い仕上げます。 パターンを合わせることを肌合わせと呼びます。
このUカットシーリング工法、ひび割れをあえて広げてシーリング材を充填することにより、シーリング材と躯体との接着面積が広くなる為、躯体の挙動に追従しやすく同じ個所にひびが再発する可能性を低くしてくれます。また、漏水にも強い工法でその確実性から幅広く採用されている工法と言えます。
半面、ひび割れを拡げた上で補修することからどうしても補修跡が目立ってしまいます。また、作業員の腕次第で仕上がりの良し悪しが変わってくるため施工する人を選んでしまう工法でした。
私自身の意見として、どうしても補修跡が目立ってしまうこのUカットシーリング工法があまり好きではありません。そこで、2021年より試験的に採用することにした補修跡が目立たない工法が、お得意様からもかなり評判が良く2022年からは全面的に採用していくことになりました。弊社で採用した新工法につきましては今後更新していく別記事にてご説明させていただきます。
ひび割れは放置しておくと漏水や爆裂を引き起こしたりするため早めに補修する必要があります。
経年が進んだ建物は必ずと言っていいほどひび割れがあると思ってください。定期的なメンテナンスで早め早めのひび割れ補修が重要です。
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